今日マチ子をもっと読みたい
今回は備忘録に近い。だらだらと書く。
やっぱり今日マチ子で一番インパクトがあるのは「cocoon」かもしれない。
美術手帖で作者が詳しく語っていたけど、 ひめゆり学徒隊をイメージに置きながらも
史実とか実際の取材とかには拘らず、イメージ重視で戦争を描いた作品らしい。
「戦争を知らない世代が戦争をイメージするとこんな感じ」な感じを確かにすごく反映してるのかなと思う。
唐突に残酷なシーンが出て見たり、変にファンシーだったり。
具体的な戦争の中身はほぼ出て来ないので、どういうテーマで捉えていいかちょっと迷う作品でもあった。
とにかく言えることは主人公のサン(蚕)とマユ(繭)という名前が本当に物語そのままで、
結局サンはマユに包まれて守られて、そして最後はマユを死なせてしまって自分は繭から出てしたたかに生きていくという残酷な話ですな。
ニンフもcocoonを読んだ後だとなんとなく掴みやすい話だった。
これも大正に起きた関東大震災をベースに置きながら、「時代の雰囲気」というものを、史実ではなくイメージ重視でファンタジーを交えながら描いた印象。
この主人公ユキもやはり結果として母親を死なせ、清次郎を死なせ、なんだかんだその美しさからいろんな男に守られ(守らせて)、最後には新しい「ママ」と幸せに暮らしました、というある種の残酷さとしたたかさが垣間見える。
年の近い百合子や、孤児の風太は「父親に必要とされたい」とか「本当は母親が欲しい」という、外部への思い、いわば「現実」と各々向かい合って日々闘って生きている。
しかしユキは一人だけ自分の中に子供を宿し、しかも処女の想像妊娠というどこまでも自己完結している感があり、対象的だった。
cocoonと同じく空想は消えて、これから現実で本当に幸せになれたらいい。
U(ユー)はまた毛色の違う物語。近未来に自分そっくりのコピー(クローン)を作ることができたら・・・と言う話。
どの話にも共通しますが、「研究所っぽい」「理系っぽい」という雰囲気があるだけで
イメージ重視。あくまで全体はファンタジーの世界。
結局クローンも「オリジナル」の人間にこだわり過ぎていたのかな、と思う。
「クローンはオリジナルよりも優れている。だからオリジナルを殺していい」という理屈が何度か出てくるが、誰かのクローンであれ、生まれた以上は個別の生き物だ。
誰かが気づけば違う道があったのかもしれない。
ラストの妹のセリフは、どう解釈したらいいのかわからなかった。単純に嫌味なのか、姉の代わりが欲しいのか、自分もコピーに殺されたいのか・・・それはないか。
西村助手もいつか本物の娘ではなくても、その後長く家族として一緒にいた個別の娘として、認めてもらえたらいいね。
この作家は読めば読むほど作品解釈がしやすくなるので今後もチェックしていきたい。