夜を越えて(『木洩れ日に泳ぐ魚』を読んで)
恩田陸の「木洩れ日に泳ぐ魚」を読んだ。
(というよりそれ以外読んだことがない)
「夜のピクニック」は高校の「歩行祭」という夜通し歩き続ける行事を通して、主人公が一つの思いを行動に移す話だが、「木洩れ日に泳ぐ魚」も、ある兄妹が一晩意見を交わして一つの結論を出す話である。
一緒に夜を明かす、ということは、確かに特別なことかもしれない。
小学校のキャンプ、中学の部活の合宿、高校の修学旅行、大学の卒業旅行。
「夜のピクニック」は二人の「始まり」の話とすれば「木漏れ日に泳ぐ魚」は二人の「終わり」の話と言えるだろう。
すでに愛情は無くなって居て、お互いを憎んで離れたくて仕方がないのに
「運命」と信じているから別れられない二人。
日の出とともに別れがやってくるけれど、大切な一晩を共有したという事実が
二人だけの秘密となり、心のどこかでお互いをつなぐ。